AYAKO ROKKAKU
ロッカクアヤコ、1982年東京生まれ。東京とベルリンを拠点に活動中。
キャンバスやダンボールなどの様々なメディアに指で直接描くことを特徴としている。作品はカラフルな色彩の混ざり合いによって色彩豊かな抽象絵画の側面を見せながらその抽象空間に少女のキャラクターが見え隠れし、西洋と東洋の美術観や文化観を感じさせる。
20歳頃から独学で絵を始め、2006年、村上隆主催のアートイベント「GEISAI」にてスカウト賞受賞。2011年にオランダのクンストハレ美術館、翌年にはスロバキアのメレンスティーン・ダヌビアーナ美術館でそれぞれ大規模な個展を開催。ヨーロッパをはじめ国際的に注目を集めると、拠点をアムステルダム、ベルリンへと移し、2023年5月には上海のLONG MUSEUMでの個展、9月にはKÖNIG GALERIEでの個展を開催するなど、国際的に大規模な展示を重ねてきた。
作品は少女のモチーフが中心だった初期から、現在ではより抽象度の高まった成熟した展開を見せており、アジアのみならず欧米においても評価を高め続け、オランダのフォーリンデン美術館、スロバキアのダヌビアナ美術館、スペインの国立ティッセン=ボルネミッサ美術館など、多くの美術館に作品が所蔵されている。
現在の拠点にしているベルリンのことは当時周りの知り合いたちから「色んなアーティストたちが集まってきている」みたいな話を聞いていて、それで興味は少しありましたが、絵を描くための拠点という感じで選んだわけではありませんでした。最初はそれほど長く居るつもりはなかったのですが、気がつけばもう10年以上経ちましたね。
村上隆さんのGEISAIっていうイベントから何人か選んでもらって、スイスのバーゼルのヴォルトアートフェアというところに作品を出してもらった時に私も現地に行ってライブペイントをしたのですが、それが初めての海外でのアートの活動でした。それをきっかけにもっと海外のアート事情を感じられる環境に身を置きたいと思うようになって、そこから漠然と移住を考え始めていました。
私が13歳の頃にインドネシアに赴任していた父親から「1人で遊びに来い」と言われて父親のところに行った経験もあって、どこか遠くの地に行くということへの抵抗はその頃から薄れていっていたかもしれません。
ヨーロッパで活動してみると、向こうの方が美術の歴史が長い分、その歴史の上で「君はどうなんだ」みたいに見られるので、そこで初めて自分の日本人としてのアイデンティティーが作品に盛り込まれているのかとか、美術の歴史の中でどういう位置に自分がいるのかなどを考えるようになりしました。
「あぁ、自分は何も考えていなかったんだな」という感覚が当時は強かったです。
でも考えていないにしても「今描いているからには何らしかの良さは私の作品にもあるはずだ」という気持ちはあって、そこと自分が問われている部分を結びつけなければという感覚はありました。
そんな中でもベルリンの展示の時にはジョルジュ・スーラに影響を受けているのかなど聞かれたりもして、全然自分が思っていなかったところに結びつけて想像してもらえるのは面白いなと思います。
そうすると耳が出てきたり目が出てきたりして、抽象的な絵画空間にキャラクターが生まれてきて。
日本は宗教観のようなものがあまりないじゃないですか。ないわけではないのですが。だから余計そのへんに命が転がっているだろうみたいな状況が自然というか、八百万の神のような、そういう状況があると思うんですよね。
最近は特に絵を描いている時に、抽象的な色を画面に描いていて、雲のような形の中から耳や目を出してみたり、何かが出そうで出なかったりとか、そういうことに意識が向いたりしています。
特に日本は普段の生活の中にも小さくて可愛いものが溢れているから、そういうものに何か魂のようなものを盛り込みたい欲が出てきてしまうんですよね。
文房具にしてもグッズにしても、例えば電車のICカードにしてもキャラクターがいたりして。でもそれがとても生活や景色に馴染んでいながら、さらにお地蔵さんや何か偶像のような有難みがあってすごく面白いと思うんですよね。
最初は女の子の絵ばかり描いていたのが、段々キャンバスに描くようになって背景が広がっていった時に背景の中に女の子がほとんど溶けちゃっているみたいな、抽象空間だけみたいな絵に興味がある時期があったんですよ。
でもやっぱりその抽象の色の中から生き物を引っ張り出して来たいみたいな気持ちになるんですよね。そうすると耳が出てきたり目が出てきたりして、抽象的な絵画空間にキャラクターが生まれてきて。
最初ダンボールからキャンバスに切り替えた時は本当に嫌だったのを覚えています。キャンバスの四角いかたちも絵に制約があるような感じがしてしまって嫌でした。それでモデリングペーストを下地に塗るようになってキャンバスの輪郭を緩くしていくというのはすごく自分にフィットして、そういった自由さがある方が自分に合っているのかなと思います。
そういう瞬間はすごい今楽しいって思うかもしれない。それを超える楽しいことがあるのかな。
描く前は何かを表現したいみたいな欲求もあるのですが、いざ描き始めるとそういったものよりももっと描いている行為に没頭してしまいますね。格闘しているような感覚かもしれないです。「こういうことを表現したい」と思いながら作品が完成していくというよりは、描きながら「作品が収まるべきところに収まっていく」というような感じだと思います。
絵の具のレイヤーを重ねていく中で良い感じに色が乗っていく波みたいなものが来たりするのですが、そういう瞬間はすごい今楽しいって思うかもしれない。
それを超える楽しいことが他にあるのかな。
やっぱり良い絵を描きたいなって思いますね。モネの一番良いやつまでいかないにしても、この絵の前に立ったらひっくり返っちゃうみたいな、そういう絵が一枚でも描けたら良いなと思うんですけどね。究極はやっぱりそこかもしれないです。
彫刻は角度とか面とか、陰影とか、平面ではあまり気にしないような部分に意識を向けるのがすごく面白くて、その彫刻制作の感覚がまた絵にも反映されていると思うし、立体ならではの面白さをすごく感じます。
自分の手で粘土原型を作ったのですが、子供の頃の遊びの感覚に近いものもありながら、目の前の空間に作品の存在感が生まれてくるというのはとても新鮮な感覚でした。
ブロンズ作品でもたくさんの色を想像させるとか、指で作った質感が絵の表面と似たものを感じさせるとか、改めて造形的に面白さがあるとか、そういった色々な反応はとても興味深いものでした。
Bronze Sculpture Edition
"Untitled" 2023
Ayako Rokkaku
Medium: Bronze
Size: W360mm x H320mm x D230mm
Edition of 18
Engraved with artist's signature and edition number
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